〘441㌻〙
第1章
1 神の僕またイエス・キリストの使徒パウロ――我が使徒となれるは、永遠󠄄の生命の望󠄇に基きて神の選󠄄民の信仰を堅うし、また彼らを敬虔にかなふ眞理を知る知識に至らしめん爲なり。
2 僞りなき神は、創世の前󠄃に、この生命を約束し給ひしが、
3 時いたりて御言を宣敎にて顯さんとし、その宣敎を我らの救主たる神の命令をもて我に委ねたまへり。――
4 われ書を同じ信仰によりて我が眞實の子たるテトスに贈る。願はくは父󠄃なる神、および我らの救主キリスト・イエスより賜ふ恩惠と平󠄃安と、汝にあらんことを。
5 わが汝をクレテに遣󠄃し置きたる故は、汝をして缺けたる所󠄃を正し、且わが命ぜしごとく町々に長老を立てしめん爲なり。
6 長老は責むべき所󠄃なく、一人の女の夫にして、子女もまた放蕩をもて訴へらるる事なく、服󠄃從せぬことなき信者たるべきなり。
7 それ監督は神の家司なれば、責むべき所󠄃なく、放縱ならず、輕々しく怒らず、酒を嗜まず、人を打たず、恥づべき利を取らず、
8 反つて旅人を懇ろに待ひ、善を愛し、謹愼あり、正しく潔󠄄く節󠄄制にして、
9 敎に適󠄄ふ信ずべき言を守る者たるべし。これ健全󠄃なる敎をもて人を勸め、かつ言ひ逆󠄃ふ者を言伏することを得んためなり。
10 服󠄃從せず、虛しき事をかたり、人の心を惑す者おほし、殊に割󠄅禮ある者のうちに多し。
11 彼らの口を箝がしむべし、彼らは恥づべき利を得んために、敎ふまじき事を敎へて全󠄃家を覆へすなり。
441㌻
12 クレテ人の中なる或る預言者いふ 『クレテ人は常に虛僞をいふ者、 あしき獸、また懶惰の腹なり』
13 この證は眞なり。されば汝きびしく彼らを責めよ、
14 彼らがユダヤ人の昔話と眞理を棄てたる人の誡命とに心を寄することなく、信仰を健全󠄃にせん爲なり。
15 潔󠄄き人には凡ての物きよく、汚れたる人と不信者とには一つとして潔󠄄き物なし、彼らは旣に心も良心も汚れたり。
16 みづから神を知ると言ひあらはせど、其の行爲にては神を否む。彼らは憎むべきもの、服󠄃はぬ者、すべての善き業に就きて棄てられたる者なり。〘320㌻〙
第2章
1 されど汝は健全󠄃なる敎に適󠄄ふことを語れ。
2 老人には自ら制することと謹嚴と謹愼とを勸め、また信仰と愛と忍󠄄耐とに健全󠄃ならんことを勸めよ。
3 老いたる女にも同じく、淸潔󠄄にかなふ行爲をなし、人を謗らず、大酒の奴隷とならず、善き事を敎ふる者とならんことを勸めよ。
4 かつ彼等をして若き女に夫を愛し、子を愛し、
5 謹愼と貞操とを守り、家の務をなし、仁慈をもち、己が夫に服󠄃はんことを敎へしめよ。これ神の言の汚されざらん爲なり。
6 若き人にも同じく、謹愼を勸め、
7 なんぢ自ら凡ての事につきて善き業の模範を示せ。敎をなすには邪曲なきことと謹嚴と、
8 責むべき所󠄃なき健全󠄃なる言とを以てすべし。これ逆󠄃ふ者をして、我らの惡を言ふに由なく、自ら恥づる所󠄃あらしめん爲なり。
9 奴隷には己が主人に服󠄃ひ、凡ての事において之を喜ばせ、之に言ひ逆󠄃はず、
10 物を盜まず、反つて全󠄃き忠信を顯すべきことを勸めよ。これ凡ての事において我らの救主なる神の敎を飾󠄃らん爲なり。
442㌻
11 凡ての人に救を得さする神の恩惠は旣に顯れて、
12 不敬虔と世の慾とを棄てて、謹愼と正義と敬虔とをもて此の世を過󠄃し、
13 幸福なる望󠄇、すなはち大なる神、われらの救主イエス・キリストの榮光の顯現を待つべきを我らに敎ふ。
14 キリストは我等のために己を與へたまへり。是われらを諸般の不法より贖ひ出して、善き業に熱心なる特選󠄄の民を己がために潔󠄄めんとてなり。
15 なんぢ全󠄃き權威をもて此等のことを語り、勸め、また責めよ。なんぢ人に輕んぜらるな。
第3章
1 汝かれらに、司と權威ある者とに服󠄃し、かつ從ひ、凡ての善き業をおこなふ備をなし、
2 人を謗らず、爭はず、寛容にし、常に柔和を凡ての人に顯すべきことを思ひ出させよ。
3 我らも前󠄃には愚なるもの、順はぬもの、迷󠄃へる者、さまざまの慾と快樂とに事ふるもの、惡意󠄃と嫉妬とをもて過󠄃すもの、憎むべき者、また互に憎み合ふ者なりき。
4 されど我らの救主なる神の仁慈と人を愛したまふ愛との顯れしとき、
5 -6 我らの行ひし義の業にはよらで、唯その憐憫により、更生の洗と我らの救主イエス・キリストをもて、豐に注ぎたまふ聖󠄄靈による維新とにて我らを救ひ給へり。
7 これ我らが其の恩惠によりて義とせられ、永遠󠄄の生命の望󠄇にしたがひて世嗣とならん爲なり。
8 この言は信ずべきなれば、我なんぢが此等につきて確證せんことを欲す。神を信じたる者をして愼みて善き業を務めしめん爲なり。斯するは善き事にして人に益あり。〘321㌻〙
9 されど愚なる議論・系圖・爭鬪、また律法に就きての分󠄃爭を避󠄃けよ。これらは益なくして空󠄃しきものなり。
10 異端の《[*]》者をば、一度もしくは二度訓戒して後これを棄てよ。[*或は「黨派を立つる者」と譯す。]
443㌻
11 斯る者は汝の知るごとく、邪曲にして自ら罪を認󠄃めつつ尙これを犯すなり。
12 我アルテマス或はテキコを汝に遣󠄃さん、その時なんぢ急󠄃ぎてニコポリなる我がもとに來れ。われ彼處にて冬を過󠄃さんと定めたり。
13 敎法師ゼナス及びアポロを懇ろに送󠄃りて、乏しき事なからしめよ。
14 斯て我らの伴󠄃侶も善き業を務めて必要󠄃を資けんことを學ぶべし、これ果を結ばぬ事なからん爲なり。
15 我と偕に居る者みな汝に安否を問ふ。信仰に在りて我らを愛する者に安否を問へ。
願はくは御惠なんぢら凡ての者と偕にあらん事を。〘322㌻〙
444㌻